僕のミッション。いやむしろ、デッカイ夢か。

僕は、日本の製造業に憂いを持っている。自分の人生を振り返ってみると、今まで、二つの会社に所属してきたのだが、いづれも「製造業」だ。新卒で入った会社は「自動車会社」であり、それから転職した先は「アパレルメーカー」だ。担当業務は製造の分野では無かったが、共通しているのは「製造業」ということだ。

アパレルメーカーに転職したときに、なぜこの会社を選んだかというと(実は転職はこの一社だけしか受けていない)、その当時「日本国内に工場をもっていること」に僕はこだわっていた。今や日本に流通している衣料品のなんと約80%は「中国製」とも言われている。僕は実際に自分の目で、中国の工場を見た経験がある。上海からバスに揺られること数時間。いくつかの工場を見学させてもらった。ユニクロに鍛え上げられた工場や、日系のスーツを作っている工場など多種にわたる。

実は「made in CHINA」だからと言って、僕は批判的な立場ではない。なぜなら「made in JAPAN」の「made by CHINESE」の現場を日本で実際に見たことがある経験があるからである。つまり、日本の工場に、中国人を労働力として雇い、衣料品や車を作った場合、これは「made in JAPAN/日本製」になります。これは決して違法なことではない。そう考えると、家族を国に残して、単身日本に渡って、作った服よりも、家に帰れば、家族が待っている環境で、作った服の方が、健康的に見えた。だから僕は「どこそこ製」というタグからの情報のみをもって、商品の良し悪しを絶対に判断しない。僕は、自分の目と手と体でもって、商品の良し悪しを判断してきた。確かに原産国というタグからの情報というのは非常に重要だが、つまるところ「価格に見合ったクオリティーかどうか」ということである。安ければ、安いなりの品質である。でも、その価格帯の商品を望んでいるお客様はいるわけで、「安ければ、ダメな商品」では決してない。お客様が皆ファッション感度が高いわけではないのである。でもそこを「財布のヒモを少々緩めれば、もっと良いモノが買えますよ」と口説き落とすのが、まさに販売員、ショップスタッフの仕事と言えます。ただ「いらっしゃいませ」を言うだけであったり、ただ商品のおたたみをするのが販売員の仕事ではない。

僕がいたアパレルメーカーは、日本の既製スーツの歴史を作り上げた会社であった。スーツを日常で着てきた日本人ならば、その名を知らないものはいないはずである。しかし、僕が退職してから四ヶ月後、中国の会社に事実上、買収された。日本の歴史あるアパレルメーカーが、である。僕は、どの国であれ外国に日本の会社が買いたたかれるのが本当に残念でしょうがない。しかし、僕のいたアパレルメーカーも、中にいたから分かるが、次の打開策を提案することができず、ずぶずぶに赤字路線にハマっていたのは事実。買収されなければ、無くなっていたと考えた方が、まだいいのかもしれない。

いろいろな考え方がある。ファスートリテイリング、つまりユニクロ柳井正氏が曰く、「将来、我が社のトップに外国人が付く可能性も十分にあると思います」。あと、オフレコになるので、どの会社か言えないが、某有名レディースアパレルの役員曰く「(海外に進出すれば)現地化で進めている。日系企業とはいえ、日本人が総経理でなくても良い」。確かに、おっしゃる通りである。日本人だからと言って、その国籍のみをもって、鼻高々に仕事をしていいわけは絶対にない。ビジネスは競争である。強き者が上にのし上がってくる、まさに「弱肉強食」の世界だ。でも、僕は、せっかく生まれ育った日本に愛着もあるし、日本人としての誇りもある(これは奢りではない)。

僕の使命は「日本の製造業を守ること」だと思っている。日本のお家芸とも言われたエレクトロニクスの分野ですら、今や急速にその力を失っているわけで、先に述べたように、衣料品でいえば、壊滅的な状態だ。日に日に、工場が潰れていく。しかし「日本製」に対して絶大な信頼は未だ失墜していない。これは海外にいるので物凄く分かる。この外国の方々からの期待を絶対に裏切ってはいけないし、実際、僕は洋服に携わる職人の方々の中で仕事もしてきて、なぜ日本製が凄いのか、分かっているつもりである。多くの職人は能弁に語ることはできない。だから、せめて僕という人間が、その日本の衣料品における職人的な技術力を世界に発信すべく、お手伝いすることが僕の使命だと思っている。ただ今の僕にはまだ力不足なわけで、もう少し時間が必要である。だから、もう少し職人の皆さまにおかれましては、ネバっていてもらいたいです。申し訳ない、そして、その時はよろしくお願いいたします。