ウール・スラックスの商品知識。〜裾口について〜
今年の夏頃から、初秋のスタイルとして、
ヤング層のカジュアルでもウールのスラックスを履くのを
街中でよく見かけるようになりました。
やはり、ちゃんとドレスのフィッティングを
できるセレクトショップは少なく、
先日某有名セレクトショップにて、「?」と思う接客を受けたので、
ここに、スラックスの裾口について、
私なりの経験の中で、最も基本的な商品知識を書こうと思います。
■シングル、ダブル、どっちが多いの?
スラックスの裾口の加工方法は、
基本的に三つです。
シングル、ダブル、モーニング
ジーンズやコットンパンツになると
ジーンズ仕上げ(たたき)や、ウェストポイントが出てきます。
さて、スラックスの加工に戻りますが、現場でもよくお客様から
「シングル、ダブル、どっちが多いの?」
という質問を受けますが、この質問、返答にちょっと困ります。
なぜならば、統計的には、シングルの方が多いですが、
感度や世代、嗜好によって変わってきますし、
今だったら、スタイルとして、ダブルをお薦めしたいというのもあります。
なので、知り合いのフィッターは「半分半分です。」と答えているようです。
■ダブルの欠点
もし股下が短いとき、ダブルだと長く再修理できません。
なので股下の寸法に自信が無いとき、
シングルに逃げたい時もあります(最近は無いですが)。
ここ数シーズンコレクションを見ていると、
トム・ブラウン、DiorHommeをはじめとして、
股下を短く、クロップド丈でとっているのを見かけますが、
テーラードのフィッターとしては、
この丈の短さで加工に出すのは、非常に勇気がいります。
先日今季スラックスを買ったのですが、
クロップド丈でとると、股下が60cm台でした。
170cm前後の身長で、60cm台でとるのは、ちょっとビビります。
しかもダブルでとると、長く再修理できない。
出来上がり恐楽(こわたの)しいです。
多分僕はまだお客様にクロップド丈のフィッティングできないと思います。
まだ「クロップド丈で」とお客様に言われたことないですが。
■ダブルは「スナップ止め」か「糸止め」か
「スナップ止め」か「糸止め」かについては、
特に今の原宿系のセレクトショップでは、
店員さんが接客でちゃんと答えられないところで、
個人的には結局どちらでもいいのですが。
こだわりのある方はいらっしゃるので、最後に。
ダブルの折り返しを固定するために、
「スナップ」か「糸」かで固定するのですが、
それが「スナップ止め」「糸止め」です。
(ただそれだけの違い)
「スナップ」を縫い付ける方が、当然手間がかかるので、
いわゆる股下一時間仕上げなどのクイックはできません。
(職人がヒマなら別ですが、笑)
ですが、「スナップ止め」のメリットとして、
ダブルの折り返しのところにたまってしまうホコリを、
掃除しやすくなります。多分、ただそれだけ。
*右上写真・・・VALENTINO 07-08FW
http://www.vogue.co.uk/shows/photos/Default.aspx?ShowID=4285