青島刑事の言ったことは、まんざらでもない

「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ! 」
ご存知、『踊る大捜査線 THE MOVIE』の名セリフである。上映された1998年というのは、ちょうど「忘れ去られた10年」にあたり、バブル崩壊後、ホワイトカラーがなんら景気回復への糸口を見せることができなかったという時代背景の中から生まれてきたのではないかと僕は思う。

この時代背景と、サブプライムローン問題後の「今」というのは、同じ閉塞感を持っているのではないかと思う。それは洋服の「販売」においてもしかりだ。いわゆる「現場」にいないホワイトカラーの社員たちが会議室で迷走している。「お客様の声」を「販売数量などの数字」と等しいと誤解している。その結果が、百貨店業界の低迷(売上高13年連続減少)と、大手アパレルの不振だ。

衣料品の販売というのは、ネットを除けば、お客様との会話によって成立するものであって、そのお客様の声というのを吸い上げやすい環境にある。しかし、その環境を十分に活かしきれていないのが現状だ。私も、いくつかのヤカタやブランドを経験したが、少なくとも紳士にあって「お客様」の意見を効果的に吸い上げるシステムを見たことがない。

私自身、自動車会社にいた経験もあるが、クルマの販売というのは、一発の販売価格が大きい。洋服の比にならない。従って、その商品であるクルマを外さないように、かなりのお金をかけて、開発の段階から、お客様の声を聞く。その後、少なくとも私がいた自動車会社は世界的に空前の販売台数を記録した。

商品の性質が違うので単純な比較はできないが、クルマと違い、すぐ目の前にお客様がいるアパレルにあって、コスト面でもお客様の声を吸い上げやすいのは言うまでもない。お客様の意見を吸い上げるのは「販売員の役割」とするならば、もっとシステム化するべきだ。それも、書類を作るためにではなく、売上をとるためのシステムだ。

現場で起きている「販売」を分析し、どんなニーズがあるのかという「お客様の声」を効果的に吸い上げれば、売上はどんどん上がっていく。売上をとるために、洋服に従事する者はサラリーマン化してはいけない。 「販売は会社で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」