顧客(お得意様)の作り方

どんなビジネスでも「顧客」が大事なのは言うまでもありません。これは洋服の販売でもしかりです。しかし、なぜ「顧客」が大事なのでしょうか。それは「売上=接客回数×買上率」という小売の最も基本的な考え方に立って考えてみると、「顧客」というのは「買上率の高いお客様」であるからです。接客したからといって、どんなカリスマ販売員でも売り逃しはあります(ちなみに3割バッターであれば、優秀という考え方もあります。イチローみたいですね)。その中、「顧客」が「ショップの顧客」だと買上率が、更に高くなり、ほぼほぼ売り逃しが無くなります(「ブランドの顧客」だと、他の商業施設の同じブランドのショップで買う可能性があるからです)。

では、なぜ買上率が高いか?お客様視点でみると、自分が着た経験のあるブランドであること、顧客名簿があれば寸法が残っていること、顔の分かる販売員がいることなどが上げられます。販売員視点では、接客に際してゼロ・スタートではないことが、最も大きい理由でしょう。(なお補足として、顧客だと、基本的にフィッティングする必要がないので、その削減できた時間を、よりファン化する他の話にまわしたり、繁忙期であれば接客回数を上げるようコントロールすることもできるでしょう。)

さて本題の「顧客の作り方」ですが、これにはいろいろ方法があります。「販売後にサンクスレターを書く」というのが、すぐに上がってきそうですが、これは決定的なものではありません。私自身、販売員になった一年目というのは、これといった顧客がいなかったような気がします。なぜならば、売ることに一所懸命になっていて、それで販売後に、いくらサンクスレターを書いても、お客様の心には響かなかったからだと思います。(ちなみに、サンクスレターを書かない主義の販売員でも、大口の顧客をたくさんかかえた人はいます) では、どうすれば顧客を作れるのでしょうか?

実はプロの販売員というのは、接客している段階で、売れる前から既に、このお客様が「顧客」になるか品定めしています。「顧客にならない」と判断した段階で、その販売行為を(売れるにせよ)早めに切り上げ、次の接客にうつれるようにします(接客回数を上げるため)。つまり「顧客になる」と判断した場合は、セールストーク、フィッティング、服以外の話に時間をかけ、丁寧な立ち振る舞いで、お客様の心を引きつけます。なお、お客様とは、購入するご本人様だけではなく「お連れ様」も含みます、ここがポイント。

なお、私のおすすめとしては伝票を書いてもらっている時に、服以外の話をすることです。セールストークやフィッティングなど購入決定前に時間をかけ過ぎると、逆に売り逃す危険性があるからです。さて、なぜ「伝票を書いてもらている時」か?伝票とは、修理伝票、顧客名簿や配送伝票のことですが、それには住所・年齢・お客様名・趣味などが記載されます。「服以外の話」としては住所・年齢・趣味・家族(子ども)・お客様のツボになりそうな話が上げられますが、その題材が伝票に書かれるからです。例えば、近所にお住まいであれば「○○線でいらっしゃったんですか?私も近所に住んでいます」など。なお年齢などは失礼に当たる場合もあるので、気をつけてください。従って、同世代のお客様は比較的話題が合うので、顧客化しやすいです。販売員自身と違う世代、それは上にも下にも、顧客を作れることこそ、プロなのでしょう。

なお、再来店時、お客様を名前を覚えていて、しっかり呼ぶことは、お客様にとって嬉しいことです。顧客の定着化につながります。来店されて、すぐに名前も聞かずに、顧客名簿を出すことも、気持ちの良い演出になるでしょう。

要は、「サンクスレター」というのはあくまで「保険」でしかなく、接客業は、全てにおいて『気配り』が大事ということです。


売上が悪い日にご来店された顧客は、本当に神様に見えます。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。○○様」