VPの話(例:新宿アルコット三越・GAP)

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限られた什器・スペースで、商品を「より」魅力的に見せる。
これもプロの販売員の仕事の1つです。

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本日は販売技術的な内容で、「VP」について書こうと思います。「VP」とは、ビジュアルプレゼンテーションの略で、視覚に訴えた効果的な訴求方法という意味です。「VMD」などという歯の浮く、アパレル業界志望の学生が好きな、そして紳士スーツでは全然徹底されていない考え方がありますが(なぜならMDが店頭を理解していないから)、その「VMD」において、重要なファクターが「VP」です。しかし、この「VP」、現場の販売員は、そんな辞書的な意味を知らないでも使っています。要は、一円でも多く売るために、できるだけ多くのお客様に、担当の商品を見てもらうことが必要で、そのためには、自分のテリトリーの中で、お客様を立ち止まらせなくてはなりません(3秒立ち止まったら、販売員の勝ちです)。そこでやることが、お客様が一番見るところに、商品を魅力的に飾ること。それが実務的な「VP」の意味です。

ちなみに「魅力的に」とは、ブランド・時期によって変わります。例えば、セール時期であれば、商品のデザインではなく、裾値や目玉商品などのプライスがお客様にとって魅力的なものになります(誰もセール初日(元旦など)に、プロパーの新作を買わないでしょう)。そこで今回取り上げたいのは、新宿アルコット三越・GAPのVPです。

このVPは、新宿アルコット三越の3階の下りエスカレーター前にあり、お客様の目に留りやすいスペースであるといえます。私も上階のジュンク堂書店帰りによくチェックします。このスペースは、ある期間で区切って、同階にあるショップで使いまわしているようです(UAなど)。残念ながら本日VPを展開していたGAPからは地図をご覧のように遠いところにスペースがあるため、たとえ、このVPで、熱心にタンガリーシャツを見ているお客様がいても、販売員からアプローチされることはありません。こういう状態は、どの商業施設にも見受けられることであり、かなりの売り逃しがあるので、ショップを超えて、それぞれの商業施設の社員がオペレーションを考えた方が良いと思う(今回の例の場合、「三越」という屋号を冠するならなおさら、できないなら同系列の「アルタ」にすべきだ)。もったいない。

さて、今回取り上げたのは、そんなオペレーションのことではない。商品と什器の使い方が「斬新だ!」と思ったからだ。GAPでは、ちょうど今、全店を上げて「デニム」のキャンペーンを行っている。GAPは、同じファストファッションでもH&Mとかとは違って、デザインで差別化するのではなく、よりボリューム層に近いところにターゲットを置いている(ポジションは、ユニクロに近い)。従って、こういった個性の薄い商品をそのままただハンガーにかけただけでは、この二坪ほどの狭いスペースだと、まわりに埋没され、お客様の目にはとまりにくくまってしまいます。そこで、このようにハンガーを変則的なかけ方にしたのだと思います。その結果、お客様の目にとまりやすく、商品的な視点だと、効果的な「VP」になったといえます。

では「こういった変則的なかけ方を、狭いスペースの場合、いつもすればいいではないか」と思ってしまうかもしれませんが、そうではありません。ブランドのコンセプトや、ヤカタの方向性、そしてお客様の感じ方、この全てを考慮する必要があります。例えばコンサバティブなお客様、こと年齢層が上のお客様だと「シャツをハンガーに、こんなかけかたして、だらしがない」「若向けなのね」と思ってしまうかもしれません。全ては、先ほど上げた「ブランド・ヤカタ・お客様」という三者の考え方を組みとって、魅力的なVPを演出してください